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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #75 ダチ

「長谷川さんって、昔からあんな風だったんですか?」
興味が先に立ち、そんな質問をする。関係性があるのはもう嫌でも確定しているので、その点について質問をしても仕方がない。
すると小寺は、少し考え込む仕草をしてから答えた。
「…あーな。まあ昔つっても、6年くらい?前なんだケド。俺らがレディースやってたのって言ったっけ?」
「それはまだ聞いてないですね」
そんな事だろうとは思ってたが、と言いたい気分を抑える。いくつか疑問はあるが、恐らくこの時点で突っ込んでもあまり意味はないだろう。
「まー、レディースつってもこの辺り俺らしかやってなかったモンでさ、カンチガイしたガキが単車乗ってイキってただけなんだケド。頭数5人でブリバリやってさぁ、今思うとホント、アホだわ」
吐き捨てるような自嘲。だが、同調して笑えば機嫌を損ねるに違いなかった。かといって、肯定したり深入りするような見解も知識も溝口には無いから、正面からは取り合わないのが吉であろう。

対応に困った溝口が黙っていると、小寺はケラケラと笑い出した。
「何、もしかしてビビった?」
「それはまあ。今はやってないんですよね?」
この肯定は、溝口にとっては最大限の譲歩である。
「そりゃそーだろ、ハタチ過ぎてあんなんやってられっかよ。結局アレだ、俺ら単車乗ってりゃそれでよかったっつーか?姐さんは単車売っぱらったらしーケド」
「そうなんですか」
溝口は天井を見上げたまま適当に相槌を打つが、小寺の話は未だ要領を得ない。この話は長谷川の性格について尋ねた所から始まったはずなのに、小寺の意識は自分を中心とした所にしかないようだった。
どちらにせよ興味の持てない話である。それよりもそろそろ首が疲れてきたので、溝口としてはとりあえずこの状況を脱したい所である。

「大体よぉ、ゾク立ち上げたの姐さんだべ?そんで2年そこら好き勝手してホイ解散でよぉ、俺らダブりそーでヒーヒー言ってんのに、自分チャッカリ大学行ってんの。ひっでーよな」
それは確かに酷いが、自業自得でもあろう。このような話になってくると、ますますどう答えればよいのかわからなくなってくる。溝口はこれまでの人生においてこの手の人間とは全く関りがなく、相手の反応を予測できないのである。
とはいえ話の内容からして同意を求められているのは確からしく、その返答内容にも苦慮した結果、溝口は苦笑しながら頷いた。
「なー、マジパねーわあのヒト」
溝口の頷きを肯定と取って小寺は言うが、その口調は誇らしげでもある。

そこでわかったのは、恐らく小寺にとって長谷川は自慢なのだろう、という事だった。
彼女のような不良をまとめ上げて目標を与え、価値観を共有しながらもその陰では自分自身のために努力をしていた。その事を小寺も理解しているから、かつての自分をアホだと断言できているのではないか。
そのように自分の中で仮定をして、溝口は探りを入れてみる。
「色々あるんですかね、あの人の立場だと」
「そりゃそーだろ。つっても俺にゃ良くわかんねーケド、ま、姐さんにゃ姐さんの立場っつーモンがあんのよ。だからよ、あんま悪く思わんでくれや」
ああ、それが言いたかったのか、と溝口は得心した。
「わかってます、人には人の事情があるでしょうからね。正直ちょっとムカつきはしましたけど、俺も長谷川さんの事は良く知りませんから、あれで嫌ったりはしませんよ」
それは素直な言葉であった。小寺の本音がわかったのだから、溝口も本音を隠すのをやめたのである。
「そっか」
小寺は短く言うと、おもむろに席を立った。これで休憩は終わりという事だろうが、溝口としては小寺が上着を着てくれなければ天井から視線を逸らす訳にもいかないので、そのままの姿勢で次の動きを待つ。

が、予想と異なり、足音は長机を回り込んで、こちらへ向かってきていた。小寺のロッカーは向こう側にあるのだから、こちらに向かってきた要件は溝口という事になる。
慌てて顔を足音の反対へと向けた。その途端、首元に腕が回されて、緩いチョークスリーパーのような体勢になる。
絞められてはいないので苦しさは無いが、半裸の女性が密着しているのである。首の後ろに感じる柔らかさは乳房にちがいないし、左耳は彼女の呼吸を感じている。否応にも溝口は動揺した。
「な、何スか…」
たどたどしい質問に、小寺はクックッと小さく笑い、耳元で囁いた。
「やっとこさマジにビビったな?スカしてんじゃねーぞテメー、いー子ぶったってわかンだよ。そろそろ素でやろーぜ、ダチなんだからよォ」
その言葉遣いとは裏腹に、口調は柔らかい。これが彼女なりの親愛表現なのだろうか?少なくとも、彼女にとって溝口は既に友人として認められているようだった。彼女は率直な対応を好むのだろう。
「了解っス」
溝口がそのように答えると、小寺は満足したのか体を離し、今度はバシンと強めに背中を叩いてきた。
「よっしゃ!んじゃ、お互いエンリョ無しだぜ。困った事あったら何でも言えや」
そう言って、またケラケラと笑った。

「そんなら、ブラ丸出しなの辞めてもらえますかね?目のやり所に困るんスけど」
多少意を決してそう伝えると、小寺は意地の悪そうな顔で答えた。
「ヤだね。オメーが慣れろや、ドーテー」
返す言葉もないとはこの事であろう。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2019/07/18(木) 18:38:17|
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