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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #71 ラッキースケベ

いくつか案は出そうだったが、その思考をまとめる時間はなさそうだった。普段正座などしたことのない溝口の両足は、既に感覚を失いつつある。完全に感覚が消えたわけではないから、今ならまだダメージは小さいだろう。
「方法については、持ち帰って考えてみます。考えがまとまったら連絡しますんで、メアド交換お願いできますか?」
溝口が言いながらポケットからスマホを出すと、彼女はばつの悪そうな顔で答えた。
「ケータイ…持ってない…です」
「あー…じゃあ、近いうちにまた来ます」
溝口は愛想笑いを浮かべながらも、内心頭を抱えていた。実際の移動が必要となると、時間経過に対してデメリットしかないからだ。メールや通話が使えれば、時間経過の間にも自動的に話が進んでいくから、デメリットもあるものの多少は楽なのである。
しかしながらひとまず話は終わったものと考え、腰を上げる。

だがその瞬間、溝口は盛大にバランスを失い、前方につんのめった。
「ぬわっ!?」
「ひゃあ…!」
足首の感覚がほとんど無い状態、かつ不慣れな体勢にも関わらず、慎重さに欠いた動きをしたのが原因である。立ち膝から左足を踏み出し、前屈みに立ち上がろうという所で、右足首がうまく接地していなかった。
咄嗟に右足を前に出して踏み止まろうとしたが、つい先ほど駄目だったものが上手くいく訳がない。案の定踏ん張り切れず、真っすぐ前方へと突っ込んでいった。
その結果、溝口の顔面は、何か柔らかいものに挟まれる形でホールドされた。部屋が暗いこともあり眼前は真っ暗だったが、自分が一体どのような状態にあるかは、容易に想像がつく。

溝口は転んだ拍子に、西島梓の股座に顔を突っ込んだのである。しかもどういう訳か、膝下まであったワンピースの下に潜り込む形であった。
両手は彼女の背後にある机の天板にかかっており、勢いは殺せている。その体勢であれば上部から倒れこんでいるはずで、ワンピースを捲り上げるような動きには絶対にならない筈である。
にも拘わらず、このような体勢になった。改変の影響を受けたのは確実である。

(いや漫画か!?)
《役得ですね。久しぶりのラッキースケベでは?》
(嫌味はやめろ。自業自得ってのはわかってんだ)
《そうとも言い切れません。こうなるように仕向けられた節もあります》
(どっちにせよだ。既にこうなる可能性があったのなら、防げなかったのは俺とお前のせいだろう)
《嫌味ですね。よくもまあこんな状況で皮肉が言えるものです》
(お前が言わせてんだ。別にこのタイミングで止める必要はねえだろ!)
《このようなおいしいシチュエーションが一瞬で終わるなんて、勿体ないじゃないですか》
(誰の都合だ!)

時間が動き出すと同時に、溝口は両腕に力を込めて、この状況から離脱しようとした。けれどもその試みは、思いの外がっちりと溝口の両頬を挟み込んだ太腿と、上から両手で頭部を抑え込まれた事により、失敗する。
「ひょ、へらえはい…!」
溝口がうまく声も出せずにもぞもぞ動くと、彼女はそれがくすぐったいのか、
「ひゃ…ん…っ」
と、やけに扇情的な声を上げた。と同時に上から押さえつける力が更に強くなる。溝口の方も、吐いた息の反射からすぐ目の前に壁面があるのを感じ取り、そこから放出される湿り気と小便の臭いを認識すれば、視界が閉ざされているにも関わらず勃起していた。

「はふへへ…はふへへ」
助けて、との言葉すらもまともに出ない。右手で机をタップしてみても意図が通じず、両側から挟まれて半開きになった口から唾液が垂れていく。
実際問題、多少息苦しいという点を除けば耐えられない状況ではないのだが、いよいよ両足には痺れが回ってきて踏ん張る事もできず、腕力と背筋だけでは拘束を解くには足りず、もがけばもがくほど先程とは違う臭いと湿り気が充満していく。
彼女の太腿にも汗が滲んできていた。もう少しだけこの汗の量が増えれば、腕を突っ張ることで脱出できるかもしれない。しかし、そのために意図的に身をよじるとなれば、それはもはや性行為ではないか?そんな懸念が頭を過ぎる。
足の痺れさえ取れれば、椅子の足を足裏で押すことで脱出が可能になるのだが、数分はかかるだろう。
ただじっと待つか、それとも足掻いてみるか。どちらを選ぶにしても、手遅れ感は否めない。

迷った結果、溝口はそのままじっと待つ事にした。可能な限り息も抑えて、これ以上刺激を与えないようにもした。
転倒までは事故である。このような体勢になってしまったのも、不運な偶然で済むだろう。しかし脱出のために故意に暴れて不利益を生じさせるとなれば、それは明確な犯罪である。このような状況でそんな配慮は些細な事でしかないかも知れなかったが、溝口には誠実である事しかできなかったのだ。

それが功を奏した。溝口の沈黙は、彼女が冷静さを取り戻すための時間を与えたのである。
自分が押さえつけているから出られないのだ、と気付いた彼女は、慌てて両手を離し、太腿の力を緩めた。溝口は彼女に余計な刺激を与えないよう、息を抑えたままそっと頭を引き抜く。
そうしてようやく自由の身になった溝口は、膝立ちのまま天を仰いで「はぁ」と大きく息をついた。

勃起はおさまっていた。


…何だこれ
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2019/06/27(木) 22:44:21|
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