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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #63 決定権

翌日は朝から焦点が発生した。当面の役割として、溝口は相川に、前日の顛末について問い質さなければならなかった。
「それで、オカ研については結局どこまでわかったんだ?」
その質問に、相川は首をすくめた。
「あちこち聞き込みをしてみたんだけど、有力な情報は出てこなかった。西島って人は、友達とか作らないタイプらしいんだ」
「本当に孤立してたのか。それで?」
「それでって…それだけだよ。人柄については不明、オカ研についての手がかりも無し。担任はプライバシー保護がどうとかで、何も教えてくれなかった」
相川は肩を落とし、大きく溜息をつく。
「それじゃあ八方塞がりだな。ま、今となってはその必要も無いか…」
溝口が言うと、相川は飛び上がらんばかりの勢いで左右に激しく首を振った。
「とんでもない、逆だって!この話のせいで宮野さんがますますやる気になっちゃってんだ。『何がなんでもオカ研の秘密を暴くんだ』って息巻いててさ…」
「その流れで勧誘されたって事か」
「そうなんだよ。こっちも本当の理由を話せないだろ?だから、興味があって調べてるって答えたら、それなら新聞部として行動した方がいいんじゃないかって話になってさ」
「あー…それについては、俺も見落としてた。こうなったら今更だが、あいつに関わるべきじゃなかったな」
思わず実感が籠る。

「でも、宮野さんもお一人だったじゃないですか。一人で新聞を作るのは、大変だと思います」
横で別の話をしていたレーティアが、こちらの会話に口を挟んできた。それを切っ掛けに、川上と牧村も参加してくる。
「確かに大変だろうとは思うけど…」
歯切れの悪い川上に、牧村が宥めるように言う。
「要点は同じでしょ?私達はレーティアを保護できればいいんだし、むしろ宮野さんの興味がオカ研に向いてる以上、オカ研に入りたいだなんて言えないわよ」
「余計に怪しまれるだけだったろうな」
溝口は頷き、理解を示す。

「けど、新聞部に入って本当に大丈夫なのか?」
相川は昨夜納得したはずの疑問を改めて持ち出してきた。だが、その話を蒸し返すといつまでも進まない。
溝口は素早く口を挟む。
「大丈夫かどうかは、お前ら次第だろ。あんまネガティブに考えるなよ」
すると、川上が口を尖らせた。
「随分と他人事みたいに言うのね。協力してくれない訳?」
自然と溜息が出そうになる。だが、ここでそのような態度を取れば、印象が悪くなるだろう。ぐっと堪えて、大きく息をついた。
「必要なら手は貸すけど、新聞部には入らんよ。こっちはこっちで予定が狂っちまったからな」
「予定って?」
「ファンクラブの件、お前らが新聞部に入るのなら、必要がなくなったって事だよ。その点では好都合と言えるんだけどな」
この説明に、相川と川上は理解できないといった風に顔を見合わせた。溝口は呆れつつ、言葉を継ぐ。
「あのなあ。新聞部に入るって事は、発信する情報を選ぶ立場になるって事だぞ。こっちで撹乱する必要がなくなるんだよ」
「いくら宮野さんでも、新聞部の内輪ネタを記事にする訳にはいかないだろうしね」
直後に牧村が補足して、それで二人は納得できたようだった。

相川は身を乗り出すと、意を決したように言う。
「じゃあ、俺らは新聞部に入る。それでいいんだよな?」
溝口は四人の顔を見回し、異論の出ないのを確認して頷いた。
「それでいいよ」
後はお前ら次第だが、と言おうとしてやめる。最終決定権を預けられた形で気に入らないが、皮肉を言っても仕方がない。
それよりも相川は、何故こうも自己責任から目を背けるのだろうか?溝口には、改変者のやろうとしている事がまるで理解できないでいた。

(相川は本当に主人公なのか?)
《状況証拠だけを見れば、そのはずです。これといった主義主張のない、優しさだけが取り柄の平凡なキャラクターですから、どうしても受け身になるようですが》
(だから活躍をしなくていい、って話でもないだろ)
《それはそうです。ですが、貴方が彼の仕事を横取りしているというのもありますから》
(白里の件は反省してるっての。だから距離を置こうとしてるんだがな)
《確かに、あの時の対応は不味かったですね。あの件があったために、当面の役割分担が決定してしまったのだと考えられます》
(どんな風にだ?)
《結論を言えば、今後、相川さんの成長が描かれるだろうという事です。逆に言えば、それまでは相川さんが自発的に行動を起こす事はないはずです》
(何だそりゃ…)

溝口は呆れたが、カティルの推測に対して否定を下すだけの根拠はない。となれば、その成長は一体いつ、どのような状況で発生するのだろうか?
相川のやるべき仕事を溝口が横取りしているという形で今があるというのなら、その成長において溝口の存在は邪魔になるのではないか?
嫌な予感が溝口の背筋を伝う。けれども今の所、対策の立てようはない。

そうこうしている内に、時間経過が発生する。改変は考える時間さえ与えず、事態をどんどんと先へ進めていく…。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2019/05/19(日) 21:00:29|
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