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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #60 横槍


翌週月曜日の昼休み、溝口が昼食を終えて相川と無駄話をしていると、焦点が来た。
周囲を警戒しつつも平静を装っていると、おもむろに教室に宮野が入ってくるのが見えた。明らかに良くない状況だが、ここで逃げを打つ訳にはいかない。溝口は相川に注意を促す。
「…おい、宮野が来たぞ」
「ああ、うん。何だろ」
今の相川は、宮野に対し以前ほどは警戒心を持っていないように見える。先の仕掛けがうまくいった事になっているので、そのように改変されたのだろうか?
宮野は脇目も振らずに近付いてくると、溝口を一瞥し、相川に対して声を掛けた。
「風の噂に聞いたんだけど、相川君、オカ研を探してるんだって?」
そうきたか、と溝口は声に出さず呟いた。なるほど、ここで宮野を使うのは、事態を動かすには良い手かもしれない。
「そうだけど…」
相川がキレのない返事をするので、代わって溝口が切り返す。
「一応聞くが、何の用だ?便乗してオカ研を記事にしようってのか?」
「そりゃそうでしょ」
宮野は悪びれもせずに答え、それを横目に見ながら相川は溝口に耳打ちをする。
「なあ、これどう思う?」
「…まあ、いいんじゃねえかな」
溝口はため息交じりに呟いた。

「それで、どの程度まで掴んでるの?情報」
宮野はわざとらしくICレコーダーを見せびらかせながら、相川に詰め寄る。当の相川は溝口に視線で助けを求めるが、溝口は半笑いで突き放した。
「話してやれよ、減るもんじゃなし」
それで相川も覚悟を決めたようで、ためらいがちに口を開く。その内容が先週時点でのものと寸分たがわず同じである事は、カティル経由で確認が取れているとはいえ、溝口にとってもそれなりに重要なのだった。

話を聞き終えると、宮野は「うーん」と小さく呻きながら、顎に手を当てて何事かを思案する仕草をみせる。
「…どう思う?」
相川はもう吹っ切れたのか、宮野に正面から意見を求めていく。それを受けて、宮野は眉間に皺を寄せながら答えた。
「不登校になってるって所と、噂の関連性よね。西島先輩にとって、そういう怪しげな噂をされるのが嫌だったから不登校になったのか、それとも何か噂になるような切欠があったのか。いずれにせよ霊がどうこうなんてのは眉唾なんだけど、そういう噂が説得力を持つような人だって事でしょ?」
ああ、と溝口は嘆息する。宮野は本人が持つ能力は別として、性質的には「こちら側」に近いのだ。そういうキャラクターだから、レーティアが自ら宇宙人だと告白しても、信じようとはしない。ある意味で正しいバランス感覚を維持している。

「だとすれば、人間関係を中心に、人物像について調べるのが良さそうだな。写真なんかもあれば助かる」
溝口がそう補足すると、宮野は大きく頷いた。
「そうそう。ただ問題は、こういう噂が独り歩きするって程度にはクラスで孤立してたんじゃないか、って懸念よね。相談できる相手がいれば不登校にもならなかったハズだし…」
「少なくとも3年にはなれてるんだから、春まではきちんと学校に来てた訳だろ。こういうのは、去年の担任やらに聞いてみた方がいいんじゃないか?修学旅行で同じグループだった人とか、いるはずだろ」
「そう、それよ溝口!まずは客観的な人物像を掴んで、その上で何があったのかを調べましょ」
取材の方向性が段々と明確になっていく。溝口にとっても話しやすいのは、やはりどこか波長が重なっているからなのだろうか?

《ですが、方向性がおかしくなっているのでは?》
(まあな。そもそもコイツ、一体何がしたいんだ?というか、改変者は一体何をさせたいんだ?)
《そんな事を尋ねられても答えようがありません。少なくとも宮野さんは、オカルトという切り口に対しては興味を示してはいないようです》
(じゃあ、それこそ何のための横槍だよ?)
《彼女の性質からして、得体の知れない噂に対する真実の追求でしょう。といっても、その真実はあくまで彼女にとってのみ都合の良い真実でしょうが…》

状況は見えないが、少なくとも溝口にとってはさほど問題にならない。動くとすれば放課後だろうが、溝口にはアルバイトという予定があり、それを盾に関与を外れてしまえばよい。場面移動があるなら時間経過も同時に生じるはずで、どの道ついていくのは困難なのである。
「まあ何だ、頑張れよ相川」
溝口がそう言って肩を叩くと、相川は助けを求めるような顔を向けてくる。警戒心はともかく、苦手な相手である事には変わりないのだろう。
「あら、アンタは協力しない訳?」
宮野は幾分拍子抜けしたように言う。ここで心を読まれるのも面倒なので、溝口は即座に答える。
「先週バイト始めたもんでさ、腰が落ち着くまで当面は無理だな」
すると宮野は、突然苦々しい顔で溝口を睨みつけた。
「アンタねぇ…」
あからさまに不機嫌な宮野の様子に溝口はたじろいだが、次の瞬間、宮野は諦めた顔で大きく溜息をついた。
「ハァ…まあいいわ。それじゃ相川君、今日の放課後から取材開始だからね。そこのバカみたいに逃げたら、ただじゃおかないから」
そう言うと、宮野はすたすたと教室を出て行った。

「なあ溝口…宮野さんって、どういう人なんだ…?」
すっかり腰の引けた相川の質問に、溝口は事も無げに答える。
「新聞部の部長だろ」

すぐに放課後がやって来る。溝口は時計を確認すると、大急ぎでバイト先へ向かった。どうせ今日は仕事にならないだろうが…。

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  1. 2019/05/08(水) 21:53:41|
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