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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #59 状況報告

「それで、どうなったんだ?」
思ったよりも相川の食いつきが良く、溝口は気分よく言葉を継ぐ。
「ま、とりあえず一通りは教わったよ。つっても品出しのやる事なんてそう多くなくて、たまに見て回って減ってるのを補充する、で済んじまうんだよな。大体俺ら高校生はフォークリフト乗れんし…。
 とりあえずは棚と商品の配置、それと倉庫のどこに何が置いてあるかを覚えるのが仕事って言われた」
「へー。取り扱ってる商品って、大体どれくらいあるんだ?」
「あー、どうだろうな。店舗はあれでも小さい方だけど、千種類くらいは楽にあるんじゃねーか?ひとつのコーナーに百は下らんとして、農業資材、園芸用品、作業資材、工具、建築金物、文具用品、カー用品、日用品、家電、食器類、食料品もあるし…いやいや、これ千どころじゃねえな」
「そんなの覚えられるのか?」
「どうだろうな、別に個々をビシッと記憶する必要もねえと思うんだよ。大体、在庫はバーコードで集中管理されてんだし、棚にタグもついてるからな。覚えとかなきゃならんのはとにかく場所だな。倉庫の中であれこれ探してるだけで、馬鹿みたいに時間食っちまう…」

昼休み、溝口は数日ぶりに相川と言葉を交わしていた。あまり能動的に関わっていくつもりは無かったのだが、ひとまずアルバイトを始めたという事については知らせておくべきだと思えたし、新しい状況について愚痴を言いたい気分も無いではなかった。

「とにかく、小寺って先輩がなかなか変な人でな。高校出てから十年くらいずっとバイトしてるらしいんだが、バックヤードのヌシみたいなもんでさ。あの人にとっちゃ倉庫は自分の部屋みたいなもんなんだろうけど、自分だけわかればいいってもんでロクに整理もせずに詰め込んであるから、もうマジで訳わかんねー状態になってんのよ。前にそれが原因でバイトが何人も辞めて、店長に言われて少しは整理したって話なんだけど」
「すげえな、それ」
つらつらと愚痴を並べても、相川は程よいタイミングで短く相槌を入れてくれるから、話しやすい。受け答えに特化したキャラクターだという認識はあったが、その真価を目の当たりにするのは初めてだった。

(成程、主役ってのはこういうものか…)
《受け身型の主人公としては理想的でしょう。本人にはこれといった特徴はないですが、話す相手に安心感を与える安定性が売りですね》
(けど、その割にはレーティアに対して随分と曖昧だったよな?)
《あの時点では立場を明確にできないからでしょう。迷いを抱えた上で、重要な局面において自分の認識を新たにするというのは、カタルシスのパターンであるといえます》
(…確かにな。何のことはない、俺の仕掛けもうまいこと利用されたって訳か)
《これだけははっきりさせておきましょう。推測ですが、ほぼ確実に断定できます。相手はプロです。生半可な仕掛けでは、相手の裏をかく事などできないでしょう》
(プロって…いや、そりゃまあ大体わかるんだが、とりあえず今はなるべく場が荒れないように立ち回るのが先だろ?)
《共通認識が確認できて何よりです。貴方は改変者に張り合おうとするきらいがありますからね》
(…気を付ける)

溝口は一度深呼吸をして気持ちを切り替え、話題を変えた。
「ところで、部活の件はどうなってる?何か進展はあったか?」
尋ねると、相川はやんわりと首を横に振った。
「進展というか…3年の西島って人がやってるらしいって情報は掴んだんだけど、その西島先輩がここの所学校に来てないらしくてさ。勝手に入会届出す訳にもいかないし…それに…」
その妙な歯切れの悪さに、溝口は何かひどく嫌な予感をおぼえる。
「…それに、何だ?」
「いや…実はさ。どうもマジでヤバいらしいんだ、うちのオカ研」
「ヤバいって、何か変な事でもやってるのか?黒魔術とか?」
ありがちなパターンではある。創作の中のオカルト研究会といえば、訳のわからない儀式や薬品の調合、幽霊にUFOなど何でもありのトラブルオールラウンダーである。ヤバくない訳がない。
相川は周囲を確認すると、声を潜めて言う。
「ここだけの話、西島先輩って、ものすごい霊能力者だって噂でさ。幽霊を成仏させたりできるから、その辺の霊が救いを求めて寄ってくるとか…」
ああ、と溝口は頷くと、同じように声を潜めながらも、若干茶化すようなニュアンスで返す。
「ラップ音とかポルターガイストが起きたり、写真を撮ると必ず心霊写真になったり?」
「そう、そうだよ。知ってたのか?」
「いや。ただまあ、そんなとこだろうとは思った」
溝口は事も無げに答えるが、相川にとってはそれはもっと重要な問題のようだった。というよりも、溝口の反応が他人事すぎるのである。

相川は溜息をつく。
「あのなあ…。噂は噂だとしても、そんなヤバそうな所に女子3人も連れていけるか?俺だってなるべく近付きたくないんだけど」
言われてみればもっともな話だが、溝口からすればそんな常識的な判断など信用していない。どうせその時になれば、本人の意思などは捻じ曲げられてしまうのだろうし、このままその西島という人を追わせておけば、勝手に巻き込まれて入会する羽目になるのは明白である。
だから溝口は、軽口を叩く。
「噂はあくまで噂、案外ただの尾ひれ背びれかも知れんぜ。もしかするとその西島って先輩も、変な噂のせいで困ってるって可能性もある。とにかく実際に会ってみて、どうするか判断するのは、その後でもいいんじゃねえか?」
「まあ…それはそうかも知れないけど…」
相川は渋々といった様子だが、ともかくも納得はしたようだった。勿論、そうでなければ話が進まないのだ。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2019/04/23(火) 21:39:27|
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