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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #52 責任

なんとなく場が一旦落ち着いたところで、おずおずと相川が声を上げた。
「あのさ…俺、イマイチよくわかってないんだけどさ。要するに今の話、レーティアが嘘をついてるって風にしたい感じ?」
その点について、相川や川上が懸念を持つだろうと予測はできていた。溝口は言葉を選ぶ。
「…いや、正確には『俺が嘘をつかせている』って建前だ。レーティア自身がいくら本当の事を言っても、世間的にはそれが嘘だと受け取られる状況にしていこうって話だな」
「話としてはわかるんだけどさ…」
相川は言い淀む。どう言い繕ってもレーティアの発言を周囲が嘘だと捉える構図には変わりない訳で、釈然としない気持ちがあるのだろう。

溝口は腕組みをし、俯いたままゆっくりと話してみせる。
「相川の心配はもっともだ。だからレーティアには聞かせたくなかったんだしな。
 この件、レーティアには黙っててもらっても構わねーよ。元々こっちだけで話を進めるつもりだったんだ。一応話しておけば、後々ややこしい話になっても対処しやすいと思っただけでな。
 さっきの話、この件は一時しのぎにしかならん。こんな事をやったっていつまでも隠し通せるものでもなし、どの道いずれバレる時が来るのは間違いない。新垣先輩の時みたいにな。
 ただ、その時まではなるべく事態を最小限に抑えたい。少しでも世界が平穏であって欲しいんだ」
すると、おもむろに川上が口を挟んだ。

「溝口は…レーティアを迷惑な存在だと思ってるの?」

その呟きは核心を突いている。となれば、ここで言い繕ってもわざとらしい嘘にしかならないだろう。溝口は軽く頷いた。
「…どんな事情があるにせよ、異星人って特別な存在が、何かしらのバックボーンもなく日常に紛れ込んでいいものじゃあない。
 現実、この地球上にどれだけの異星人が紛れ込んでるのかは知らねえよ。それでも普通の人は異星人なんて信じてないし、UFOはいつまでたってもアンノウンなものなんだ。それがわかってるから、お前らもレーティアが異星人、しかも王女様だってことを隠そうとしてるんだろ?
 レーティア個人がどれほどいい奴であったとしても、その存在は俺らの隣に仕掛けられた核爆弾そのものなんだよ。既にどっぷり関わっちまってる以上、放置して逃げる訳にもいかない。俺らには責任があるんだ。レーティアを保護し、この世界も守るって重大な責任がな。
 だから、逆に聞くぜ。お前らはどうなんだ?レーティアはただの友達だし生まれがどこだとかは関係ない、みたいに現実逃避決め込むつもりじゃないよな?」

言い過ぎた、その実感はあった。明らかに溝口は、ここで言うべきでない認識について口を滑らせてしまった。だが、もう取り返しがつかない。このまま進めるしかない。

三人の視線は、真っ先に相川に向かう。この場合の当事者だからである。
そして相川は完全にしどろもどろになっており、助けを求めるように川上を、次いで牧村に目を向けた。しかし二人が助け舟を出してくれないので、とうとう頭を抱えて項垂れてしまった。
一転、川上はきっぱりと答えた。
「私は逃げないよ。正直、溝口の言ってる事なんか半分も理解できないけど、レーティアを放っておけない。助けてあげたいと思う」
いかにも優等生的発言だが、この場には相応しい答えにちがいない。溝口は頷き、視線を動かす。そして牧村と目が合うと、彼女は覚悟を決めたように口を開く。
「…そうね、私は逃げたいかな。レーティアは可哀想だけど、事情もよく知らないしね。なんでこんな面倒な事になってるんだろ、って思うよ。
 でも、今更知らん顔する訳にもいかないのよね。友達だからどうって話じゃなくてさ、何て言うか…好奇心?全部見捨てて逃げる事はできるけど、そしたらきっと後悔する。良い事じゃないかもだけど、ここが世界の中心なのよ。今は」
牧村らしいといえばらしい回答に、溝口は無言で笑った。しかし同時に、このような反応を示すという事自体が不可解にも思えてくる。そこには改変者の意図が感じられないからだ。

《それは恐らく、貴方の発した問いが改変者にとって答えられないものだったからでしょう》
(だから、素の牧村が出たのか)
《貴方という不確定要素、というより明確に生きているキャラクターのせいで、世界全体が正しく因果に引っ張られているのです。この焦点の間、会話そのものに改変は発生していません》
(…一応聞くが、いい事か?)
《判断の難しい所です。小さな改変では状況が動かないとなれば、より大きな改変が発生する可能性が高まると推測できます》
(この連中とは早いとこ離れたいんだがなあ、全く)

残るは相川一人である。この物語の主人公という立場を持つはずの相川は、しかしながら素性としては優柔不断な凡人に過ぎない。判断を先送りにするという性質が意味するものは、物事の本質を思考する能力に欠けているという事実である。
「どうなんだ、相川」
溝口が問いかけると、相川はゆっくりと顔を上げた。その額には脂汗が流れており、表情には苦悩がありありと浮かんでいた。
そして、ぽつりぽつりと言葉を絞り出していく。
「俺は…わからない。大体、なんでこんな事になってるんだ?突然来て、一緒に暮らす事になって、俺は何もしてない。向こうから勝手に来て、それなのに責任とか、世界がどうとか…全然訳わかんねーよ…」
「そんなもん、俺らにだってわかんねーよ!」
咄嗟に溝口は声を上げ、相川の言葉を遮った。これ以上喋らせると、この物語の根底が破壊されかねない。
「いいか相川、わかるとかわからんとか、そんなのは問題じゃねえんだよ。問題なのはこの現実と、この現実にどう対応するかだろうが!
 わからないから何だ?甘えてんじゃねえよ!お前の家に居候してるレーティアは何だ?訳のわからんバケモノか?お前が生きてきたこの世界は何だ?ただの幻とでも言うつもりか?!
 そうじゃねえだろうが!これが現実なんだ、嫌でも向き合わなきゃならん事実だろうがよ!その事実に対してどうするかを聞いてんだ、はっきり答えろ!」

少しの沈黙の後、俯いた相川は体を震わせながら、
「俺は…わからない…」
とだけ、呟いた。

なんかしっくり来なくて書き直した結果がこれなので、この物語はこうなっていく運命なんでしょう。

…どうしよう、これ
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2019/03/10(日) 22:41:18|
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