FC2ブログ

有象無象ディメンション

Photofighter type-B Burst ignition

「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #51 相談・2

「それじゃ、レーティアの頭がおかしいって事になっちゃうじゃない!」
突然声を荒げた川上を、溝口は両掌を向けるジェスチャーで静止する。
「落ち着いてくれ、これもちゃんと計算しての事なんだ」
「計算って…」
相川は困惑を露にしているが、特に見解はない様子で川上と溝口を交互に見やっている。情けない姿だが、それは受け手に最も近い立ち位置ではあるのだろう。

「そう、計算だ。そこで二つ目の相談、って事になるんだが…」
溝口はそこで一旦言葉を止め、改めて二人の様子を確認する。一応二人とも溝口の意図を汲み取ってはいるようで、口を挟む気はないようだった。
溝口は少し安堵しつつ頷き、話を継ぐ。
「レーティアの公式ファンクラブを作ろうと思ってる」

相川と川上は互いに顔を見合わせた。この提案をどう処理すればいいのかわからない、理解できないという心境がはっきりと読み取れる表情である。
返事を待たず、溝口は話を続ける。
「つまりだな、レーティアをこの学校のアイドルに仕立て上げるんだ。レーティアの持つ抜群の容姿、気品のある物腰、そしてミステリアスな生い立ち…これは既に充分な話題になってる。そこを利用させてもらって、改めてキャラクターとして提示する」

相川と川上からの反応を待つ。が、やはり情報の整理に時間がかかっているようである。溝口としてはなるべく噛み砕いて説明したつもりだったのだが、まだ上手く伝わらないとわかると、幾分気落ちもする。

「つまり、今のレーティアそのものを作られた偶像という事にしてしまう…って事ね」
その声の方向には、いつの間に来たのか牧村がいた。
「お、随分早かったな」
溝口が声を掛けると、牧村はそれには答えずに、苦々しい顔で言う。
「道理で、レーティアを仲間外れにした訳だわ。こんな話、あの子には聞かせられない」
「悪いとは思ってるが、この先の事を考えるとこれしかねえんだ。もしこれから先、レーティアの仲間が地球にやってきたら…」
「そんなの、全部を冗談とかショーで済ませられると思うの?」
「もちろん、俺らにそんな力はねえよ。けど、芸能活動って言い分をつくっておけば拡散のスピードは抑えられる。時間稼ぎはできるだろ?」
「…」
牧村は黙り込んでしまった。一方、相川と川上にはすっかり置いてきぼりを食わせてしまったようで、ポカンと間の抜けた顔を向けている。

「まあ、そんな深く考える事じゃない。当面はこっちで何とかするから、相川はレーティアを適当に誤魔化しといてくれればいいんだ。実際問題、この話をレーティア自身が知る必要はない」
溝口がそう言うと、相川はやはりよくわかっていない様子ではあるものの、ひとまず頷いてみせた。
「よし。さて、そうなると誰か適当な窓口が必要だな…。ファンクラブの元締めは俺がやるとしても、宮野や新垣先輩に睨まれてるからあまり自由には動けないだろう。俺の代わりに前に出て注意を惹いてくれる奴がいればいいんだが…」
溝口が考え込む仕草を見せると、牧村が口を挟んできた。
「それなら、沢木なんかが適任じゃない?あいつ、レーティアに興味津々って感じだし」
「沢木か」
納得したように反芻するが、その名前は溝口の知らないものである。

《沢木という男子生徒の発生を確認しました。同じクラスですね》
(拍子抜けするほどうまくいったな)
《トラブルメーカーは必要ですから、渡りに船といった所でしょう。今後、汚れ役の心配は軽減されましたね》
(…ところで、替わりに誰が消えた?)
《後藤さんです》
(…そうか)

溝口は後藤という男子生徒について、殆ど何も知らない。というよりも、クラスメイト全体に対してこれといった印象を持っていなかったというのが正しい。
自分の立ち回りによって誰かの存在が消え去ったという認識はあっても、実感は殆ど無い。だからといって罪悪感を覚えないという事はなく、あってはならない事だという理解はあるから、悔やむのである。
その後悔は表に出す訳にもいかず、かといって本心でさえない。悔やまなければならない、悔やむべきだという理解だけが、内心と本心の中間で宙ぶらりんになっている。

(俺は間違った事をやっている。けど、この狂った状況の中で、他にどうやって対抗しろってんだ?)

カティルは答えない。溝口がその答えを求めていないのを認識しているからだ。
それは、他ならぬ溝口自身が背負うべき十字架なのである。
スポンサーサイト



テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2019/03/03(日) 20:43:19|
  2. 小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0


  5. にほんブログ村 その他日記ブログ その他30代男性日記へ
    押してくれとは言えないが
<<日記 | ホーム | 好天で好転>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://photofighter.blog121.fc2.com/tb.php/3823-2ced4a51
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

酔狂な人達

プロフィール

オレンジ02

Author:オレンジ02
徒手空拳で世の中エグろうと試みる人、俺。
ブログ名義でツイッターもやってます。

カテゴリー

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

リンク

ブログ内検索

RSSフィード