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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #49 相談・1

屋上に出ると、実に都合よく人の姿は見当たらなかった。というより、必然だろう。この状況で他人の存在は不純物でしかないからだ。
溝口は出入り口の裏手、いつもの場所に腰を下ろした。考えてみれば屋上の、普段風雨に晒されている場所に座り込むというのは幾分清潔感のない所作に思える。防水処理のされた緑色のコンクリート面は滑らかで、特に汚れているという風合いでもないのだが、今そんな事を考えても仕方がない。
「さて」
溝口は雰囲気の感触を確かめるように、まず一言きっぱりと吐き出した。焦点は来ている。タイミングは計らなければならない。
「とりあえず、まず一つ目の相談だ。相談というか、提案だな」
「提案?」
川上は不思議そうに頭を傾げる。見る者の目を意識した、あざとい仕草と言わざるを得ない。
「そう、ちょっと色々考えてな。提案なんだが、お前ら、どっか部活に入れ」
溝口は幾分ぶっきらぼうに言い切った。

相川は困惑の表情を浮かべながら食ってかかる。
「おい、何だよ急に…部活って、そりゃ俺は帰宅部だけど、川上はテニス部だぞ?」
「わかってるっての。俺が言いたいのはだな、お前らがレーティアを中心に一緒に行動する理由をつくれ、って事だよ」
「レーティアを中心に…?」
言われてみて、相川は溝口の言わんとしている事に気が付いたようだった。
「…つまり、俺たちがレーティアの周囲を守っていても疑問に思われないようにする、って事か?」
「そういう事。で、そのために手っ取り早いのは部活だろ?」
念を押すように二人の顔を交互に見る。が、川上はまだ腑に落ちないといった様子で口を開く。
「うーん…けどそれって、『友達だから』って訳にはいかないの?」
「それだと、レーティアの友達を俺らが選ぶ事になるな」
溝口がそう切り返すと、川上ははっとした表情で口をつぐんだ。

「で、どこに入るかなんだが…」
溝口はそこで言葉を止め、相川を見た。視線を向けられた相川は明らかに戸惑いを見せながら、しどろもどろに言う。
「えっと…川上と同じテニス部、って訳にはいかないよな…?」
「当たり前だろ」
そんな答えが出るのはわかっていた。溝口はばっさりと切り捨て、川上に目を向ける。
「なるべく、人の少ない部活がいいのよね。それでいて兼部しても問題なさそうな所…」
「そうだな、そんな感じの所がいい。活動内容が明確じゃなくて、同時に集団で出歩く事もあるような部活がベストだな」
「あるか?そんな部活…」
相川は首を捻っている。実際問題、そんな部活があるのかどうか、溝口は知らない。これについては、カティルに尋ねても仕方がないのである。
そんなものは、『現時点では』存在していないのだから。

すると、川上が何かを思いついたように、胸の前で手を合わせて「あ」と声を上げた。
「そうだ、『オカルト研究会』って聞いたことある?」
この瞬間、溝口は内心ガッツポーズをした。望み通りの展開である。ひとまず、素知らぬ顔で設定を引き出す。
「オカルト研究会…?いや、聞いた事ないな。そんな部あったっけか?」
「それがね、部活じゃないのよ。三年の先輩が一人でやってる、非公認の同好会みたいなものなんだって」
「それ、同好会そのものじゃないのか?」
要領を得ない話ぶりに、思わず突っ込みが出る。川上は苦笑しながら話を続ける。
「私も、噂で聞いただけだから…。ともかく、なんだかよくわからないのは確かなの。誰がやってるかも、どこでやってるかも謎」
「おいおい、そんなの本当にあるのか?仮にあったとしても、怪しすぎるだろ」
相川の懸念はもっともである。だがこの話が出てきた時点で、それは既に存在をはじめていた。
正直な所、この内容はあまり好ましいものではない。そもそも実在の怪しい部活に入ったところで、牽制としてはあまり意味がないのだ。それならこちらで部活を立ち上げた方が話が早い。

だが、こうなった以上は無視する訳にもいかないだろう。改変者がその設定を選んだのだから、これを否定するのはうまくない。ひとまず、話に乗る事にした。
「…そういえば、俺も以前似たような噂を聞いた事があったな。その時は根も葉もないただの噂だと思ってたから気にも留めなかったんだが、こうなると気になるな」
「けど、どうするんだ?探すにしたって手掛かりもないし、知らない人が相手だぞ。それにオカルト研究って、どうも嫌な予感がするんだけど…」
相川はすっかり及び腰になっている。溝口においてもそれが本来あるべき姿なのだが、だからといって放っておけば、想像もつかない形で向こうから関与してくるに違いない。

溝口は瞬間頭をフル回転させ、理屈を提示してみせる。
「いや、手掛かりはある。まず一つ、その人は三年生であり、単独行動を好むという事だ。もう一つは、少なくとも噂が広まる程度には認知されてるって事だから、放課後に活動の実態があるはずだ。この辺は、新垣先輩に聞けば手掛かりが得られるかもしれない」
「そっか、そうだね。風紀委員長の新垣先輩なら、放課後の校内で活動してる人については詳しいかも」
川上は相川に同意を求める。好奇心を露わに目を輝かせる川上にそのように迫られれば、相川も引くに引けなくなる。
「…わかった、確かめてみよう。けど、手掛かりが得られなかったらどうする?」
「その時は、一番シンプルな方法を使うしかないな」
溝口はひょいと首をすくめた。
「3年の教室の前で、『オカルト研究会に入りたいんですけど!』って、叫びゃあいい。それで一発だ」

それを聞いた相川は、この日一番苦い顔をした。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2019/02/26(火) 22:09:29|
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