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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #48 知性の所在

週が明けて月曜日。溝口は朝から落ち着かない気分だったが、昼までは動きもなく平穏であった。
が、昼休みに入って少し経つと、がやがやと状況が動き始めた。

《焦点が来ました。先のテストの結果が貼り出されたようです》
(貼り出すぅ?…ああ、マンガなんかだとそうやって見せるよな。けど、まだ答案の返却も始まってないぞ)
《個々の答案の返却や成績表の配布などは考慮しないという事でしょう。先に焦点が発生したのはテスト勉強時です、結果だけを見せて一段落にしたいのでは?》

理由はともかく、時間経過が発生しかねない事を考えれば、結果を見に行かなければならない流れには違いなかった。溝口は残りのサンドイッチを口に詰め込んで席を立つ。相川や他の連中はまだ食事を続けていたが、どうせすぐに追いついて来るのは目に見えていた。

正面玄関近くの掲示板には数人の生徒が集まっていたが、皆これといってリアクションを取るでもなく貼り出された順位表を眺めている。ここで発表されるのは各学年上位10人までで、点数などは隠されていた。思ったよりは簡素である。
2年の1位には白里の名があり、2位にはレーティアが入っていた。そして5位に牧村が来ている。
予想の範疇ではあったが、酷い結果である。そういう設定のためだとしても、世間の狭さが露骨ではないか。だが、こればかりは文句を言っても仕方のないところである。
そのまま少し待つと、相川達4人が連れ立ってやってきた。と同時に、久方ぶりの台詞指示である。

「よう、やったな」
声を掛けると、相川は不思議そうに返してくる。
「やったって、何がだ?」
「牧村とレーティア、トップテンに入ってるぜ」
そう言った横で、牧村は順位表を見て「おー」と声を上げた後、釈然としない顔をレーティアに向けた。
「白里さんはともかく、レーティアにまで負けた…」
溜息をつく牧村に、レーティアは申し訳ないといった表情をみせる。成績自体には頓着がないのだろう。
すぐさま川上がフォローを入れる。
「紗雪だって5位なんだから、充分凄いじゃない。一緒に勉強したうちの3人がトップテン入りなんて」
「ホント、大したもんだよな。俺らも鼻が高いってもんだ」
相川はまるで脇役のような台詞を発している。
「私はともかく、アンタ達はどうなのよ」
牧村はそんな実も蓋もない質問を投げかけて、意地悪そうに笑った。
ばつが悪そうにはにかんで尻込みする相川を横目に、溝口が答える。
「自己採点では、結構良く出来た感じだったんだけどな。流石にトップテンには届かねえわ」
「私もそんな感じかな。いつもよりはできたと思う」
川上がそのように答えたので、自然、視線は相川に集中する。
「あー…まあ、その、何だ。悪くはない…と思う」
タジタジになった相川の姿に、小さな笑いが起こった。その渦中、溝口はそっと輪を離れ、教室へと小走りに駆け戻る。

数秒後、放課後までの時間経過。直前に辛うじて着席が間に合った溝口は、即座に後席の相川に声を掛けた。ここからは台詞の指示は無視である。
「この後、ちょっと時間あるか?相談があるんだが」
「相談?」
「ああ、今後の方針に関わる事でな。川上と牧村にも話しておきたい」
「レーティアはいいのか?」
相川はそう言うと、傍らのレーティアに目を向けた。レーティアもこちらの様子を伺っており、何事か口を出したそうにしている。
「レーティアは、今回は外れてくれ。少し面倒な話になりそうだから、後で結論だけ相川から伝えてくれればいい」
溝口はばっさりと言い切った。

しょんぼりするレーティアを尻目に、溝口は席を立って川上と牧村にも同じ事を伝えた。無論、牧村についてはクラス委員会議があるのは織り込み済みである。
「じゃ、会議が終わり次第、屋上に来てくれ。一時間もかからんだろ?」
「多分ね。けど、レーティアは大丈夫なの?」
「それについては、ちゃんと根回しをしておいた。とりあえずは大丈夫なはずだ」
「根回しって…アンタ、また何か妙な事企んでない?」
呆れたような牧村の視線。が、疑いを向けられている感じはない。溝口は頷いた。
「それも込みの話でな。ま、俺の読みが外れてなけりゃ、これで当面は落ち着くはずだ」
「ま、アンタがそう言うんなら大丈夫なんだろうけど…わかった、すぐ行く」
「ああ、よろしく」

相川と川上を連れて、教室を出る。廊下に出たところで、正面から白里が来るのが見えた。
「あ、白里さん」
川上が声を上げると、白里は小走りに近付いてきた。その白里に溝口は、伝わるかどうかはともかく、目配せをする。
「白里さん、今回もトップだったね。凄いじゃない」
「それはその…はい、ありがとうございます」
謙遜のないその受け答えに、若干の自信を伺わせる。社交辞令とはいえ、やはりそれこそが白里にとっての根幹なのだろう。
「皆さんは、どこか行かれるんですか?」
白里からの質問に、溝口は即応した。
「ちょっと内々で相談があってな、屋上に行く。そんじゃな」
半ば強引な話の切り上げ方ではあるが、白里は対応してくれた。
「あ、はい。それでは」
ぺこりと頭を下げると、そのまま2-B教室へと入っていった。
「白里さん、うちのクラスに何か用事かしら」
川上は頭を傾げるが、溝口はその疑問を取り合わずに屋上へと歩を進めた。

ここまでは順調である。この先は、離れた場所の状況をこちらの口先だけでコントロールしなければならない。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2019/02/24(日) 21:25:08|
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