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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #47 小さな仕掛け・2

しかし考えてみれば、考えられない話ではない。白里はここ2週間で発生した存在であり、今のところは放課後に図書室で会うだけの関係性である。人間関係を設定されていなくても不思議はないし、世俗に疎いという事がキャラクター性にもなる。
溝口は自分を納得させ、仕方なく説明を行う。
「つまり、レーティアの出自とここに来ることになった理由付けだな。あんなお嬢さんがどうして急にこんなつまらん学校に転校してきたのか、しかもどういう訳で相川の家に居候なんて羽目になったのかとか、皆それなりに理由が欲しいんだよ」
他人事のように言うと、白里はある程度理解した様子で頷いた。
「つまり、レーティアさん本人の与り知らない所で、妙な噂が立っているんですね…」
「あー、いや、本人は知ってる」
溝口は頭を掻きながら答え、キョトンとした白里に説明を続ける。
「つまりな、誰にでも秘密にしたい事情はあるんだよ。本人が知られたくない事を、他人によってたかって根掘り葉掘り探られるのは嫌なもんだろ?だったら、とりあえずぼやかす所はぼやかして、話せる事だけ話した結果が…まあ、変にこじれたというかな」
嘘ではあるが、間違ってはいない。事実、溝口たちの流した噂は紆余曲折を経て様々な形に変化していった。それこそが溝口の狙いであり、この状況下であれば仮にどこかで真実が漏れても、根も葉もない噂の1バージョンとして誤魔化せる。

「レーティアさんには、何か知られたくないような理由があるんですか?」
その白里の指摘に、溝口は首を横に振って答えた。
「さあな、俺もあんまよく知らねえんだ。相川なら何か知ってるだろうけどな。ただまあ、本人が知られたくないって話を無理に聞き出すのも悪いだろ?どうせ俺は部外者だし、知る理由も無いしな」
溝口は、用意しておいた文言をつらつらと並べた。さも優等生然とした事を言ってみせて、好奇心に水を差す作戦なのである。と同時に、自分はあくまでも部外者であると強調もした。

が、白里は想定外の言葉を発する。
「…溝口さんって、おかしな事するんですね」
「おかしな事?」
突拍子もない事を言われたので、溝口のオウム返しの声は裏返った。白里はクスリと笑う。
「だって、宮野さんをレーティアさんに会わせようとしてるのは、溝口さんじゃないですか」
読まれていた。というより、白里を甘く見ていたのだろう。少なくともその一点においては、であるが。

(ここでお前に頼るのは癪だが…どうだ?)
《悪いようには取っていないようですが。ここは大勢に関わる場面でもないですし、別に構わないのでは?》
(そりゃそうなんだが、的外れな事を言うのも気持ち悪いだろ)
《そういう失敗も人生ですよ。成功体験だけを追い求めると脆くなりますから》
(当事者でもないからそんな事が言える。…くそ、まあいい。どうせ五分五分の賭けだ)
《確率論としては、五分五分かどうかはわかりませんけどね》
(言うなよ。気が滅入る)

溝口はひとつ大きく息をつくと、敢えて口角を上げニヤリと笑い、全て計画通りだとでもいうように念を押した。
「そういう事だが、どうだ?頼めるか?」
白里の考えがどうであれ、その議論に意味はない。むしろ白里が何かを思い込んでくれた方が、溝口の目的には都合がいいとも言える。
断られるなら断られるで、それでも構わない。どの道溝口の筋書き通りに運ぶ訳がないのだし、そうなればとりあえずは自分の役割を果たして、成り行きを受け入れるだけだ。
すると、白里はあっさりとこの話を引き受けた。
「わかりました。私はそこにいるだけでいいんですよね?」
「そうだな、それでいいと思う。というより、後はレーティア次第だ。一応、宮野にはどんな事を話しても構わんが、風紀委員の時みたいな騒ぎにはならないように、って言っといてくれ」
「…よくわかりませんけど、それで伝わるのなら、わかりました」
「頼む。片付いたら連絡くれ。そんじゃな、お疲れ」
歯切れよく受け答えをする白里に背を向けて、溝口は自分の自転車へと向かう。すぐさま背後から「お、お疲れさまでした」と聞こえて、片手をパッと挙げて応えた。

荷物をカゴに入れて自転車の鍵を外していると、チリンチリンとベルの音。見ると、白里が一礼をして自転車を漕いでいった。

(律儀なもんだ。あんなかしこまった同級生がいてたまるかよ)
《愚痴ですか?》
(いや、愚痴でもない。羨ましいのかもな、あの一歩引いた立ち位置は)
《あの手のポジションは大変ですよ。大抵イジられキャラになりますから》
(物語ならともかく、リアルだとイジメに見える奴か。ギャグだと意外にセーフティだが、ホラーだと真っ先に犠牲になる…)
《ホラーだったら、貴方も前半の内に死ぬタイプですね?》
(死にたくねえなあ。死んだと見せかけておきたい)
《では黒幕ですね。クライマックスか続編で死にます》

どうでもよい会話を交わしながら、軽快に自転車を漕いでいく。
現段階でできる事は全てやった。後はただ、賽の目がどう出るかを待つのみである。

内容がどうも足りないなって時に、カティルとの会話で水増しするのやめたい…やむにやまれぬ…うぬぬ
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2019/02/14(木) 23:14:54|
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