FC2ブログ

有象無象ディメンション

Photofighter type-B Burst ignition

「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #45 そっくりさん

このがらんとした空間を前に、レーティアはすっかり期待を裏切られたようだった。
「なんだか、生活感がなくて寂しいですね…」
「父さんと母さんがあっちに行く時に、ここにあったテレビも持って行っちゃったのよ。何もなくてごめんね」
牧村は苦笑しながら言い訳をするが、その内容は今一つ要領を得ない。
そう感じたのは溝口だけではないようで、特にこの場で最も事情に疎いだろう白里が、おずおずと聞き返す。
「あの…牧村さん、ご両親はおられないんですか?あっちに行くって、一体どういう…」
「ああ、うん。ウチの両親、今ちょっと東京の方に出張…というか、まあ仕事でね?一年くらいで戻ってくるんだけど、そのために転校する訳にもいかないでしょ」
「要するに、ちょっと長めの留守番って事ね。心配しなくて大丈夫だから」
牧村の説明を受けて川上が要約すると、白里は安心しつつ納得できたようだった。溝口にしても、そこでようやく表面上の事情を把握する。

こうした話を聞いて、レーティアは申し訳なさそうに頭を下げた。
「そういう事情があったんですね。配慮が足りず、身勝手な事を言ってしまいました…」
「まあ、説明してなかったしね。こっちこそ、何かあれば良かったんだけど…」
そう言うと、牧村はふと何事かを思いついたようで、「ちょっと待ってて」と言い残してリビングを出て行った。

数分後、牧村は5冊の雑誌をダイニングテーブルの上に並べた。見ると、それらは全て別々の、女性向けのファッション誌である。
「あ、これ最新号だ」
川上は声を弾ませながら、早速一冊を手に取った。溝口にはよくわからないが、ティーンズ向けのメジャー誌らしい。
牧村は言う。
「私の両親、ファッション関係の仕事してるのね。デザインとかブランド戦略とか、よくわからないけどなんか色々やってるみたい。そういう関係で、毎月送りつけて来るのよね」
「そ、そうなんですか…?」
白里はわかったように頷くが、見るからに圧倒されている。自らの見掛けにあまり気を使わないので、苦手意識があるようだ。
一方、レーティアは既に、川上と一緒になって雑誌を覗き込んでいる。そこだけを見れば、牧村の判断は半分は正解といえた。

反面、こうなると溝口と相川、男子としては手持ち無沙汰である。女子に交じって女性向けファッション誌を広げる訳にもいかず、小さいテーブルの傍に座り込んで、とりあえず菓子に手を付けた。
女子4人は椅子に腰を落ち着け、川上とレーティア、牧村と白里でペアになってそれぞれ盛り上がりをみせている。特に牧村は、素材として未知数の白里に興味を持っているようで、解説に熱を入れているようだ。
そんな様子を見上げながら、相川は「女子会じゃねーか…」と、小さく呟いた。溝口は頷いて同意を示すが、この状況に反発するつもりは毛頭ない。焦点が来ていないとはいえ、状況の主軸から外れていれば面倒がなくてよい。

「あ」
不意に、レーティアが短く声を上げた。何事かと見ると、彼女は手元の雑誌を食い入るように見つめている。
「どうしたんだ?」
相川が腰を上げながら声を掛けると、代わって川上が笑いながら答えた。
「結構早く見つけたね、紗雪のそっくりさん」
「「そっくりさん?」」
白里とレーティアは同時に言葉を漏らした。

「そう、顔つきがよく見ると似てるでしょ。去年、ちょっとした騒ぎになったのよね」
川上が説明をする向かいで、牧村は苦笑を浮かべている。
「違う方なんですか?」
レーティアは誌面と牧村の顔を交互に見比べ、不思議そうな顔をする。一方、白里は状況がよくわかっていないらしい。
「私には、違う人だと思えますけど…」
「メイクひとつで印象ってガラッと変わるから、雰囲気だけ見てると気付かれないのよね」
白里の呟きに、牧村はどこか誇らしげに言う。
「そうなんですか?」
「そうそう。白里さんも、一度メイクしてみればわかるんじゃない?」
その語調から、牧村は白里を変身させたいと考えているらしい事は、容易に判断できた。理由は理解できないが、そのようなキャラクターという事なのだろう。

レーティアはなおも腑に落ちない表情を浮かべている。
「うーん…別の方…?」
「気になりだすとキリがないでしょ?じゃあ、いいもの見せてあげる」
牧村はそう言うと、再度席を立つ。そうして今度は、何やら小さい額を持ってきた。
「ほら見て。マキさんと一緒に撮った写真」
マキというのがモデル時の名前に違いない。ひどく安直で、いかにも関連がありそうに感じられるが、それが逆にもっともらしさを演出したりもするのだろうか?
「わぁ、すごい…本当にそっくり。でも身長が違うんですね、牧村さんも割と身長高いけど…」
白里はそのような部分を指摘し、自分なりに事態を飲み込んでいる。
「そ、背の高いのがマキさんね。172センチだって」
そういう設定なのだろう。牧村自身は165cm程度であるので、7cmも差があればかなり違って見える。
「学校新聞の号外でこの写真が出回ったから、色々あった噂も沈静化したんだよね」
川上の説明。女子が大いに盛り上がる中、溝口は自分が関わったとされる事件の次第を初めて知ったのだった。

(つまり、あの写真は合成か。プロの仕事ではあるんだろうが)
《はい。そして貴方は、合成画像を使って出鱈目の記事を作成し、無断で学校中にばら撒いたという事になっています》
(随分と大胆で杜撰なやり方だ。他人の空似で済ませた方が、余程マシだったろうに)
《ですが、効果はあります。少なくとも、興味本位で騒ぎ立てる人々を黙らせる事はできますよ》
(そうして、より深い疑念だけが残る訳か。悔しいが、まさに今これから俺がやろうとしてる手段だぜ)
《目的はともかく、結果を出していく必要があるというのは道理です。問題の先送りや伏線の未消化は嫌われますからね》
(俺が好かれる必要なんか無いだろうに。クソ、生贄に祭り上げられてる気分だ)
《貴方の不用意なアドリブに端を発する問題です。きちんと始末をつける必要はあるでしょう?》

ぐうの音も出ない。
スポンサーサイト



テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2019/01/30(水) 22:27:06|
  2. 小説
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0


  5. にほんブログ村 その他日記ブログ その他30代男性日記へ
    押してくれとは言えないが
<<予定は未定 | ホーム | どうなってんだ天気予報>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://photofighter.blog121.fc2.com/tb.php/3806-a50ad00b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

酔狂な人達

プロフィール

オレンジ02

Author:オレンジ02
徒手空拳で世の中エグろうと試みる人、俺。
ブログ名義でツイッターもやってます。

カテゴリー

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

リンク

ブログ内検索

RSSフィード