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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #39 厄介なタイミング


「てかな、そもそもレーティアが相川を異性として見てるかどうか」
いい加減な言い訳を誤魔化すように言うと、牧村は首を傾げながら答えた。
「あー、どうだろね。そもそも瑞穂の場合は幼馴染で世話焼きだからって理由で理解できるんだけど、レーティアが相川を好きになる要素って無くない?や、あの子の好みがわかんないから断言はできないけど、相川に男としての魅力は無いでしょ」
どうやら牧村は徹底して相川を男として見ていないらしいが、それは当面関係ない話である。
溝口は少し考えてみて、一応は相川の弁護をしてみる事にした。
「いや、そりゃどうかな。レーティアだって地位のある立場なんだし、国にいた頃はそれなりに大勢の、地位や能力のある男を見てきてるはずだろ。となれば、相川のようなガツガツしてない男ってのは、逆に魅力的かもしれんぜ」
「見たことないタイプって奴?それもどうだろ、ああいうのって執事とか召使っぽくない?」
言われてみればその通りである。むしろ立場のある人間だからこそ、周囲には禁欲的な異性が多かったに違いない。
「…それか、単純に自分より立場が上の人に憧れてるかだな。一応、レーティアはこの国だとただのお客さんで、相川家の居候だ。支配する側が案外Mっ気あるとか、よくある話だろ」
「ちょっと溝口~、変なマンガ読み過ぎじゃない?」
牧村は白けた目で溝口を睨む。だが実際問題、この世界が物語として改変されている以上、そのマンガチックな考え方こそが最も正解に近いのではないか?

しかし、そんな思考経路を説明する訳にもいかない。溝口は苦笑しつつ、この話題を切り上げる事にした。
「まあ冗談はさておいて、現状あいつらの気持ちを確かめるにしても収穫がなさそうではあるな。何かイベントでも起こさにゃあ…」
「イベントねー。具体的には何かアテでもあるの?」
牧村はそろそろ飽きてきたのか、頬杖をつきながらノートを広げている。それならば、こちらも話を長引かせる必要はなさそうだった。
「いや、その時になったら考えりゃいいだろ。当面はこれといって行事予定もないしな…。んじゃ、そろそろ続きやるか」
話を切り上げ、再びテスト勉強に戻る。

そうして2度の休憩を挟みつつ、気が付けば17時を回っていた。溝口は大きく伸びをしながら時計を見る。
「もう5時かよ。そろそろ切り上げるか?」
促すと、牧村は自分のスマホで時刻を確認し、ふう、と大きく息をついた。
「…そうね。じゃ、ここまでにしときましょ」
同意が得られたので、溝口は素早く筆記用具を片付けた。そうして鞄にノート類を入れ込みながら、溝口は牧村に礼を言う。
「牧村のお陰で助かった。明日のテストは結構いけそうな気ィしてきたわ」
すると牧村は、意地の悪い笑みを浮かべながら答える。
「あ、自信なかったんだ?良かったよね、私が誘ったげて」
礼を言われて気分がいいのだろうが、冗談にしても癪に障る。が、腹を立てるような場面でもない。
「へいへい。この礼はテストの結果で返しますよ」
適当に冗談を返しながら、牧村の片付けを待って教室の引き違い戸に手をかける。その時、廊下から誰かが駆けてくる足音が聞こえた。
(一体こんな状況で誰が)と軽い疑問を抱きながら戸を開けるのと、カティルから《宮野さんです》との返答を受け取るのは同時である。時すでに遅し。

「ひゃ!?」
目の前で急に開いた戸に驚いた宮野が立ち止まって声を上げると、溝口は引っ込む訳にもいかなくなる。が、ここで牧村と2人きりで居た事が知れれば、面倒な事態になるのは間違いなかった。そこで溝口は、わざとらしく声を上げながら教室を出る。
「宮野かよ。びっくりさせんな」
言いながら教室の中を横目にちらと見やると、牧村は慌てて身を隠そうとして、咄嗟に戸の裏に張り付いて座り込んでしまった。これでは戸を閉める事もできず、覗き込まれたら見つかってしまう。
仕方がないので、とりあえずその場で会話を試みる。
「こんな時に何やって…って、見りゃわかるか。新聞、できたのか」
宮野は丸めた紙を小脇に抱えていた。それが何かは誰の目にも一目瞭然である。
「なんとか、締め切りギリッギリってとこ。いやーヤバかったわ、危うく廃部になるとこだった」
その言葉について聞き返すのは、恐らく間違っているのだろうと判断する。瞬間、時間停止。

(締め切りに間に合わなければ廃部ってのは、俺も知ってるべき情報だな?)
《はい。新聞部の部員は宮野さんただ1人ですから、通常であれば既に廃部です。それを彼女は、これまで通り新聞を毎月発行するのを条件に、引き延ばしをしている訳です》
(…成程な。ひでえ状況)

ここまでの宮野の苦労も、その一片とはいえ把握はしている。となれば溝口は宮野に対して同情的にならざるを得ない。が、それと同時に身に覚えのない罪悪感を抱え込まされてもいる。これを鑑みれば、対応は難しかった。
「…そうか。頑張ってんな」
辛うじて出た言葉は、それだけである。なるべく無表情を装ってはみたものの、できた自信はまるでない。
そんな何とも言えない表情が宮野には滑稽に見えたのかもしれない。あるいは、深刻になりそうな場の空気を察したのかもしれないが、宮野は明るく笑った。
「まあね、頑張ってるよ~。なんせ私にとっちゃ、これが生き甲斐なんだから!」
「生き甲斐…か」
その言葉を噛み締めるように復唱する。そのように生み出されたキャラクターなのだとは理解していても、その生きざまは、今の溝口にはまぶしい。

その認識が、うっかり口を滑らせた。
「お前は楽しそうでいいよな…」
言葉を放った直後、それがとんでもない失言であると気付く。すぐ後ろには牧村がいるのだ。慌てて言葉を継ぐ。
「テスト勉強はやってんのか?どうせお前の事だ、全然手付かずなんだろ」
心にもない、皮肉めいた言葉を吐き出す事で、どうにか体裁を取り繕おうとする。
しかし宮野は全く気にも留めないといった風で、飄々と言葉を返す。
「テスト勉強~?そんなもん、どうだっていいわよ。赤点さえ取らなきゃ充分だって!」
全く堪えていない宮野の反応に内心胸を撫で下ろしつつ、溝口は笑みを浮かべながら頷いた。

そうこうしている内に、宮野は自分が急いでいたのを思い出したらしい。
「おっと、私行くわ。早いとこコレ全部掲示して、部室に鍵かけに戻らなきゃだし。例の件、うまくやってよね!」
早口にまくし立てると、宮野はその場を走り去っていった。
それを見届けた溝口は肩を落とし、大きく溜息をつく。酷い状況には違いなかったが、この事態はまだ収拾していない。
「もう行った?」
戸の陰から牧村が顔を覗かせた。溝口は無言で頷く。
牧村はパッと立ち上がると、溝口の腕を掴んで足早に歩き出した。
「とにかく、早いとこ出ましょ。『例の件』とやらについても聞かせて貰わなきゃだし、ね」
先を行く牧村の表情は読み取れないが、その口調からはかなり機嫌を損ねているのがわかる。
溝口はひとまず、歩調を合わせる事にした。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2019/01/10(木) 22:52:48|
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