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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #38 相川について

一時間半ほど互いに単語帳を読み交わしたところで、一旦休憩を入れる事にした。白里が図書室から動いていないのをカティルに確認した上で、連れ立って購買に行き飲み物を買う。

教室へと戻る道すがら、溝口は牧村にひとつの疑問を投げかけた。
「なあ、牧村ってさ…相川について、どう思う?」
「え、何急に…なんで相川?」
明らかに当惑する牧村の表情を見て、溝口は話の切り出し方を少し失敗したのに気付く。
「いや…あんまでかい声で言うべきじゃないんだろうけども、川上って相川の事好きだろ?」
声を潜めて言うと、牧村は「ああ…」と小さく嘆息しながら二度頷いた。溝口は話を続ける。
「で、今はレーティアが相川の家に住んでる訳だ。レーティア的には、相川ってどうなんだろうな?」
「そういう事ね。なら逆に聞くけど、溝口的には相川ってどうなの?」
牧村は質問の意図を理解したようで、逆に質問をしてきた。
「俺的には、か…。男の視点からはちょっと難しいんだが、何て言えばいいかな…」
溝口は一旦口籠ったが、ここは率直に答える事で牧村からの見解を聞き出さなければならない。

「そうだな、俺から見た相川は、正直退屈な奴だな。子供過ぎると言ってもいいかも知れん。良い奴ではあるんだが…」
言うと、牧村は呆気にとられたような顔で溝口を見た。
「へぇ…。もうちょっと濁してくるかと思ったけど、率直すぎない?意外」
「俺から聞いたんだし、嘘ついても仕方ないと思ってな」
「まあ、そりゃね。ここで変にヨイショとかやられたら、答える気無くすとこだったわ」
牧村は納得したようにうんうんと頷くと、それから右手を頬に当て、ゆっくりと噛み締めるように語り出した。
「うーん…そうねぇ。私的には…といっても、大体アンタと変わらないんだけどね。
 まず退屈、これは間違いなし。お行儀が良すぎると言うか、受け身すぎると言うか。何かあれば優等生みたいな対応をするんだけど、八方美人で頼りないのよね。
 子供過ぎるっていうのは、ちょっと違うかな。確かに女子に対しては小学生みたいな感じはあるけど、あの鈍感っぷりはどっちかって言うとオジサンっぽくない?変に達観して説教臭いっていうか、常に良い事言おうとしてるみたいな。高校生っぽくないよね。単純に。
 けどやっぱり、良い奴だってのは間違いないよね。どんな状況でも悪気を感じないっていうのは、けっこうすごいと思う。人の好き嫌いとか、そういう感情が無いんじゃないかってくらい」
ボコボコである。あまりに容赦のないこの指摘は、しかし相川をよく観察した結果といえた。それはどういう感情なのだろうか?

牧村の話を聞いているうちに、教室へと戻ってきていた。腰を下ろしてお茶を一口飲むと、牧村はまた話し始める。
「…そう、好き嫌いがないのよ、相川は。アイツって、『誰が好き』とかってあるの?溝口から見てどう?」
「え!?急に振るなよ…。そうだな、俺から見た感じだと…レーティアに分がある感じ、かねぇ」
溝口がそう答えると、牧村は興味深々といった様子で顔を近付けてきた。内緒の恋バナ、というテンションなのだろう。
「分があるって?」
こちらの目を下から覗き込んでくるような牧村の視線に、若干の気恥ずかしさを感じて視線を上に泳がせながら、溝口もまた声を潜めて答える。
「何て言うかな…要するにだ、相川に好き嫌いがないとして、じゃあアイツは一体どういう基準でもって他人の傍にいるかって話でさ。俺が思うに、それは庇護欲なんだよな。他人の世話をするのが気持ちいいタイプなんだ多分。
 けど、川上もそういうタイプだろ?人の世話焼きたがる…」
「確かにね。瑞穂はそういうタイプだし、相川とは合わないかも。ついでに言えば、あの3人って姉弟みたいじゃない?瑞穂が長女で相川が弟、レーティアが末っ子みたいな」
「あー、そんな感じはあるな。つまりあいつらは、下手に距離が近すぎんだな」
溝口はそう結論付けてみて、相川を取り巻くこの状況が膠着状態にある事を再確認した。

牧村の方でも、溝口の懸念をなんとなく理解したのかもしれない。
「で、なんで相川の話?」
改めてそう尋ねてくるので、溝口はようやく本題を切り出した。
「要するに、このままだと面白くねえんだよ。何せあっちは完全に縦社会になっちまって、変に安定しちまってるからな。俺としては相川にはもうちょい頑張って貰いたい訳よ」
そうは言ってみたものの、溝口は自分自身、この問題提起が随分とアバウトなものであった事に気が付いた。というよりも完全に急ぎ過ぎで、レーティアが来てからまだ4週間ほどしか経っていないのである。
すると牧村は、意外にもすんなりと同意をみせた。
「レーティアが来て、あの2人にも何かしら進展があるんじゃないかって見てたけどさ、逆に落ち着いたっていうのは予想外だよね。内心ドッキドキでも我慢してるからそういう風に見えてるだけかも知れないけど、何考えるのかなんてわかんないしね」
「そうそう。だからな、あいつらを後押しする必要があるんじゃないかって思う訳だ」
この機を逃すまいと、溝口は少し慌てて結論に踏み切った。つまるところこの話は、溝口自身が方向転換を図るためのものなのである。
もっともらしい理由をつけてみて、その上で傍目に不自然な動きをするための言い訳。今後自分が何か妙な行動を取ったとしても、それは相川達の関係性を進めるためなのだ、という大義名分であった。
焦点が来ているかどうかは問題ではない。自分をどう納得させるか、それだけが問題なのだった。

「なるほどね。アンタなりに結構色々考えてるんだ」
牧村はすべて納得したというような顔で言うが、一転少し不機嫌そうな雰囲気を見せた。
「…で、溝口的にはどっちとくっついて欲しい訳?」
また面倒くさい話になった、と内心溜息をつきながら、溝口はやんわりと首を横に振った。
「そんなもん別にどっちでもいいよ。川上もレーティアも可愛い女子だとは思うけども、個人的な興味はそんなに無い。さっきも言ったけど、面白いかどうかが重要なんでな」
呆れ気味に言うと、牧村はクスリと小さく笑った。
「それ、大概ゲスくない?まるで新聞部みたい」
「元新聞部だよ」
悪いか、と付け足すのをぐっと我慢する。つまりは、こうなっていくしか無かったということだ。
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  1. 2019/01/06(日) 11:09:41|
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