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「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #30 苦手意識

翌朝は30分ほど寝坊をした。とはいえ日課になったジョギングの時間は充分あったので、気を引き締めるつもりでペースを速めて片付けた。腰は若干痛んだが、日常生活に支障の出ることはなさそうだった。

校門で風紀委員に呼び止められる。それは新垣ではなかったが、溝口が風紀委員から目の敵にされているという設定が履行されているのは間違いなかった。
とはいえ溝口の身にこれといって校則違反になるようなものはなく、渋々といった形で無罪放免となった。
しかし、このままではいずれ支障を来たす可能性もある。過去、風紀委員と敵対した事に何かしらの理由を持たせて、現在は校則違反をする必要がないという設定をどこかで仕込む必要がありそうだった。それには、新垣の再登場を待たねばならないだろう。

教室に入ると、既に登校していた相川とレーティアに体の心配をされた。川上と牧村もわざわざ様子を見にやって来た。前日に起こった事を考えれば当然ではあるのだろうが、やはり人間関係そのものの変化を思い知らされる。

(だが、こうもコロコロと状況が変わるってのは、傍目にどうなんだろうな)
《それはわかりません。ですが、こう考える事はできます。掘り下げが進み、貴方を起点とした因果が形成された、と》
(因果、か。昨日も言ってたな?)
《当然そうあるべき物事の帰結、と表現してもよいですよ。ですが、その必要はないでしょう?》
(まあ、話としてはわかる。つまりはそうあるのが自然だから、むしろ違和感は生じないって事か)
《はい。ですが気を付けてください。この手の関係性は、状況と共に先鋭化するものです》
(気に留めておく)

この日は焦点が発生する事もなく、クラス外の連中と接触しないまま放課後になった。例によって図書室でテスト勉強である。
前日と同じく図書室は混雑していたが、先に来ていた白里が卓を確保していた。やはり前日と同じ席順となり、溝口は引き続きノートの書き写しに取り掛かる。

「溝口さん、その…昨日はすみませんでした。私の不注意で…」
白里は謝罪を口にするが、顔は下を向いたままである。それが罪悪感のためなのか、それとも羞恥心のためなのかはわからない。
いずれにせよ焦点は来ていないので、溝口は自分なりに気を遣う。
「気にすんなって、あの場にいたら誰でも同じ事するだろ。代わりといっちゃ何だが、俺が進級落としそうになったら助けてくれよ?」
「それは…あの、頑張ります」
「そこは『落とさないように頑張れ』って言って欲しかった…!」
大袈裟に頭を抱えてみせると、冗談とわかったのか白里はクスリと笑った。すると今度は後方から肩をつつかれる。
振り返ると、すぐ目の前に牧村の機嫌の悪そうな顔付き。
「そんなにテストが心配なら、徹底的にしごいてあげよっか?マンツーマンで」
その言葉に卑猥なものを感じるのは、昨夜の件があったからだろうか?溝口は慌てて顔を横に振り、
「じ、自力で頑張ります!」
と、わざとらしく恐縮してみせた。
卓の向かいの三人が笑ってくれたので、ひとまず冗談で済んだ形になる。

(そういえば昨日は『深度』とも言ってたよな?)
《はい。これも因果についての話です…説明が必要ですか?》
(ああ、いや、今のでなんとなくわかった。要するに、因果の起点ってことか)
《概ねその通りです。白里さんは昨日時点で生成されたキャラクターですが、彼女の存在に付随する因果がどこまで遡るのかという点で興味深いのです》
(白里自身ではなく、その付属品か。確かに、見たところこのノートはあまり長く使われちゃいないな。書き込みは多いが)
《内容についても注視が必要です。テスト前とテスト後、因果の擦り合わせがどこで生じるかという事です》
(俺が書き写したノートの内容が変わるって事か?)
《ノートとテストの内容に差異があった場合はその可能性もある、という話です。因果伝達の実証は、しておきたいですね》

その後は18時までノートの書き写しに集中した。一方、本来の目的であったレーティアの学力確認は大体一段落したようで、事によるとレーティアと白里が学年一位を争う事になるかもしれなかった。

図書室を出るなり、白里は興奮気味に言った。
「レーティアさんは、凄いです。ほんのちょっと教えただけなのに、あっという間に吸収しちゃう…天才です」
「そんな…マツリの説明が上手だったからです。マツリはとてもよい先生になれると思いますよ」
いつの間にか仲の良くなっている二人の後方で、川上は相川に言う。
「レーティアの方は大丈夫そうだし、残る問題は…相川よね」
「面目ないです…」
相川は項垂れた。溝口が白里のノートにより成績を下げる訳にはいかない以上、この六人の中で最も成績が悪いのは相川という事になったからである。前回の成績が示されていないので、もしかすると赤点スレスレまで落ち込むかもしれなかった。
いずれにせよ、実際の能力で言えば溝口の学力などたかが知れている。因果が歪む可能性を前提に放置しておく訳にもいかないのだから、結果がどう出るかはともかく準備をしておかなければならない。

「そっちの調子はどう?順位上げられそう?」
隣にいた牧村がそんな事を訊ねてきたので、溝口は苦笑いを返す。
「わかんねえけど、結果出さなきゃ白里に悪いもんな。頑張るつもりだよ」
「ふーん…まあ、別にいいけど」
牧村はつまらなさそうに離れていき、川上に追いついていく。今の返し方があまり良いものでないのは溝口自身わかってはいたが、他に返しようのない質問だったのも確かである。

溝口の、牧村に対する苦手意識は変わらない。設定上の関係性はともかく、現実的に反りが合わないタイプなのである。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2018/12/18(火) 22:06:01|
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