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有象無象ディメンション

Photofighter type-B Burst ignition

「あの日見た君の横顔を、絶対に忘れない」 #21 用

以降の会話は、スマホを用いたテキストメッセージによって行われた。

「この写真が本物であるという証拠は?」
『さっき無音アプリで撮った。だとしても、アンタにはこの場で写真が本物かどうかを確認する手段はないし、その必要もないハズ』
「それがお前のスタンスだって事だな」
『そういう事。私はデマをばら撒いてるつもりはないけど、それをどう受け取るかは読者次第でしょ』
「俺がこの写真をばら撒いても?」
『アンタはそんな事をする奴じゃない。仮にやったとしても、私であることを証明できない。その前にアンタ自身の盗撮が疑われる』
「俺にもお前を信じろと?」
『信じてもらうしかない。私だって人並みに頭は働くつもり、なんでもかんでも記事にしようとは思わない。でも、何も知らないんじゃあ何も判断できない』

溝口は、ふう、と小さく息をついた。ここで宮野を「信用できない」と切り捨てるのは簡単だ。だが、それは恐らく、正しい行為ではない。
問題はそこにはないのだ。重要なのは、これが劇であるという事なのである。そして溝口による反論は逆効果をもたらした。
負けを認める事こそが必要とされているのだ。そして厄介ごとを抱え込めば抱え込むほど、物語は面白くなっていくだろう。

「わかった。俺に話せる事は何もないが、お前とレーティアさんが直接話す機会をつくってやる」
『本当!?…横槍無し?』
「難しいが、機会がない訳じゃない。牧村がいない時を見計らって、相川と川上をレーティアさんから引き離す事はできると思う」
『具体的には?』
「考え中だ。うまい作戦が思いついて状況が整うまで時間がかかるかもしれない。だが一か月、いや二週間以内に何とかする」
『長い。一週間では無理?』
「牧村が問題だ。あいつは勘がいい、迂闊に動けない。都合よく委員長会議でもあればいいんだが」
『次の委員長会議は確か…十日後だっけ。確認しとく』
「頼む。決行時に連絡する」

話はついたので、これ以上ここにいる理由はない。すっかり冷めてぬるくなったコーヒーを一気に飲み干すと、溝口は財布から千円札を出してテーブルに置いた。
それを見て宮野が困惑の声を発する。
「ちょっと、アンタ…」
「自分が飲み食いした分の金は払わせてもらう。パンケーキもうまかったしな」
「それは…いいんだけど…」
何か言いたげな宮野を残し、溝口は席を立った。こちらを見ていた店主に会釈をして、足早に店を出る。

時計を見ると、ほぼ1時間が経過していた。カティルに状況を確認する。

(どんな状況だ?焦点は?)
《まだ残っています。まだ何かあるのかもしれませんが、ひとまず平常通り帰宅するべきでしょうね》
(わかった。それで、学校の方はどうなった?)
《あなたの予想通り、乱痴気騒ぎになりました。幸い事態は生徒指導室内部だけで完結し、外部には漏れていないようです》
(いっそ事件になってくれりゃあ、宮野にも大義名分が立ったろうにな)
《随分と彼女の肩を持つようになりましたね》
(距離感が近いんだよ。わかるだろ?俺はああいうのに耐性がねーんだ)
《いえ、むしろ良い事だと思いますよ。現に、この状況に対する理解も深まった事ですし》
(そうなのか?)
《改変者の嗜好、とでも言うべきでしょうね。コメディよりも『こっち』の方が好みのようです》
(俺にはよくわからん。面白がってないか?お前)
《観察者としては、とても興味深いです。向こうの方でも貴方の性分を把握したようですし》
(…ひとつ聞くが、お前、神と繋がってないよな?)
《わかりません。改変者側が私の存在を感知している可能性はゼロではありませんから。しかし私が意図的に情報を流しているかと問われれば、それはノーです》
(まあ、都合が悪くなるだけだもんな。今のは聞かなかった事にしといてくれ)
《ああ、それと…》
(何だ?急に勿体ぶって)
《先程の写真ですが、紛れもなく本物でした。良かったですね》

「ああああ!!もおおお!!!!!」
溝口は怒声を上げて頭を掻きむしった。人のまばらな駅前とはいえ、周囲の視線が一斉に、一人のバカに向けられる。
と、スマホに新しいメッセージの通知。見ると、宮野である。

『さっきの写真、悪用しないように』

「悪用って何だよおぉぉ…!」
もはや、悶絶、である。その場にうずくまる溝口に、カティルが無慈悲な追い打ちをかけてきた。

《悪用はしないようにとの事ですから、正しく活用すればいいのでは?》
(正しく活用って何だよ!バカかお前は!)
《何って、ご存じでしょうに。ポニーテール女子のふとももと下着、直球ど真ん中ですね》
(お前絶対あっち側だろ!絶対あっち側だろもう!!今日一日黙っててくれ!!)
《では、そうします。焦点はもう過ぎたので、ご安心を》

茫然自失のまま電車に乗り、とぼとぼと帰宅して部屋に閉じ籠る。
しかしいくら悩んでも解決が見えないので、その晩は写真を二度『活用』した。

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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2018/11/26(月) 21:54:43|
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