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「けものフレンズ」が突出した理由を考える・後

・けものフレンズの置かれていた状況

アニメ「けものフレンズ」は作品としての人気を獲得したが、一方でその人気の受け皿は当初存在していなかった。
製作費2千万という本当なのか嘘なのかわからない情報(某作品1話分の1/5程度という噂があった)がまことしやかに語られたように、事実グッズ展開においてはOP、EDのCDとBD付ガイドブックのみというラインナップ。
キャラもののように見えるのに肝心のキャラクターグッズがなく、そのために聖地巡礼という形でキャラの元ネタのいる動物園が賑わう事になる。
プロモーションにおいても動きは殆ど見られず、事実放送前時点での期待度はほぼワースト、AT-Xで放送された0話は低予算・無配慮がそのまま形になったかのような放送事故ならぬ事故放送とでも呼ぶべき代物で、作品に対する期待を削ぐものであったのは間違いない。
けものフレンズプロジェクト全体で見れば、プロジェクトの中核だったアプリ版は2016年12月の時点で終了していたし、漫画版もまるで中身のない(ように見える)公式同人誌状態で、状況設定の大きく異なるアプリとアニメ間の橋渡しをする事も出来ず、早々に終了してしまった。
この状況は2月の半ば頃まで続いたが、2月上旬にBD付ガイドブック1巻がどこも品切れになったり、日経新聞で取り上げられたり(幾分無理解で無責任な内容ではあったが)するようになって、公式ではないもののグッズ販売を始める業者が出てきた。
急激な需要の発生がゼロから供給を生み出したのである。これは当然の事といえた…本来の意味では、だが。

・プロモーション戦略ということ

本来は「需要があるから供給する」というのが正しい流通の形である。ところがいつの頃からか、「需要が発生するのを見越して供給する」という、つまり簡単に言えば「流行は創り出すもの」という状況が出来上がってしまった。
1つの例を上げれば、服飾業界が大々的に発表する「今年の流行色」などは、業界内の会議によって決定されている事が既に知られている。
実際にはまだ売れていない商品を『次の流行』として広く売り出す事で『本当の流行に仕立てる』。これがプロモーション戦略という事なのである。
「需要があるから供給する」という当たり前の状況は、製造業と小売しか儲からない。広告屋やメディアが儲けるためには、彼ら自身が需要を作り出す立場にいなければならなかったのである。
だがそれは、必ずしも結果の伴うものではなく、一種のギャンブルである。そのギャンブルに勝利するために、より多くのプロモーション費用をかける。その結果、作品そのものにかけられる予算が削られ、旬の芸人やアイドルを起用した中身のない宣伝が朝のニュ―スを賑わせるのだ。
このもはや当たり前になってしまった状況に嫌悪感を抱く人々は少なからず存在した。しかし彼らの存在はプロモーションの対象外とされ、それでも分別の無い子供や見識の無い連中は無節操にプロモーションを受け入れて、商売はそれで成立する。
漫画原作の実写映画が、多くの反発を受けながらも制作され続ける理由がこれなのだ。有名な原作を使い、旬の俳優や芸人を出す。実写化そのものがプロモーションの産物であって、売り出すまでが彼らの仕事なのだから、中身など必要ないのである。中身にかける予算よりもその分でCMを売った方が、初週興行収入が稼げるからだ。
初週に客が入れば、後はランキングで上位ですよ、流行してますよとやれば、酷評だらけでも暫くは馬鹿を騙す事ができる。むしろ内容が酷ければ酷い程話題になる世の中である。
こんな状況で、まっとうなモノづくりが成立する筈はなかったのだ。

・時代と視聴者の変化

ところがけものフレンズは、これら業界に蔓延するプロモーション戦略に対して真正面から勝負を挑み、そして規格外ともいえる規模での勝利を勝ち取った。
もはや死に体のコンテンツだったという事実が、少ない予算の全てを純粋に制作に注ぎ込むという形を産み、視聴者を裏切らない内容となった。
あまりにも皮肉な事だが、プロモーション戦略を排除した事で却って視聴者の厚い支持を得て、爆発的拡散に至ったのだ。
俺が特に注目しているのは、まさにこの部分なのである。プロモーション戦略の排除によって誠実な作品が生まれ、正しく評価されることで口コミが広まっていく。
この構図は去年、既に前例が成立していた。日本アカデミー賞アニメーション部門最優秀賞に輝いた「この世界の片隅に」である。
興行成績で勝った「君の名は」を押しのけての受賞は大番狂わせに見えたかも知れないが、クラウドファンディングによる予算集めに加え、監督自身が自腹を切ってまで描き続けた執念の作品は並々ならぬ完成度と存在感を放っており、作品を知る者にとっては当然の評価といえた。
が、本当に驚くべきは、長年プロモーション戦略の中核を担ってきたテレビメディアが、作品が既に多くの支持を得た後とはいえ、自らのプロモーション戦略の敗北を認めたという事実である。
つまりこれは、もはや広告屋とメディアが虚像の流行を作り出す時代は終わって、メディアもまた大衆に消費されるものとして供給を考えているという事なのである。
それでもまだ、転換は映画メディアだけの範疇で済んでいた。映画を見るには金を支払う必要があり、特に興味のある者でなければそもそも見に行かないものである。誰でもが自由に見られるテレビとは、客層自体が異なるのだ。
依然としてテレビメディアと広告屋は、プロモーション戦略という正義の元にあぐらをかいていられた。そこにけものフレンズが現れたのである。

・テレビアニメの転換点

特に広告屋は肝を冷やした事だろう。アニメが製作委員会方式になって長らく、広告屋は出資者として主要な位置を占めてきた。アニメは円盤が売れなければペイできないのだから、何を差し置いてもまず「売れる作品」にしなければならない。
だから広告屋は内容に口出しもし、作品が売れるように仕向けていく。だが基本、彼らは単なる扇動屋でしかない。アニメ制作についてのいろはなど持ち合わせていないのだから、彼らの指示に従えば現場は破綻する。
そんな状況下で、けものフレンズはプロモーション戦略を行う事無く人気を爆発的に拡大させ、BD付ガイドブック(書籍扱いで売り上げランキングにすら入れない!)は瞬く間に品切れとなる。
そして4月20日時点で公式に「1・2巻累計12万部」という数字が出るに至って、この作品が生み出した需要は「ラブライブ」「まどマギ」といった近年の大ヒット作に並ぶものであると証明されたのである。
プロモーションが無くても、ではないのだ。プロモーション戦略という「不純物」が無かったからこそ、けものフレンズは純粋な作品としてこの人気を獲得する事ができたのである。
だから、なのだろう。3月31日付の日経新聞に「進撃の巨人2期」の全面広告が掲載された。これはプロモーション戦略が今後も有効である事を業界へ向けて示すための、言わば悪あがきである。
そもそも「進撃の巨人」は既にビッグネームなのである。今更広告を打った所で意味はないし、売り上げに影響する事はないだろう。
それでも広告屋にとっては、その作品が売れる限りは「自分達の成果」なのである。どうせ円盤は良く売れるのだろう。そうして連中はこの全面広告を高く掲げ、「プロモーション戦略が成功しました!」と吠えるのだ。
だが、もう遅いのである。既にけものフレンズは存在しているのだから。
二匹目のドジョウを狙う者達は、あるいは稚拙な映像と幼稚なシナリオで勝負をかけるかもしれない。しかし正常な思考能力のある者であれば、プロモーション戦略に頼らない事こそが勝機であることを見抜いている。
これから先、良質なシナリオと視聴者に向き合った内容で真っ向勝負を挑んでくる作品が増えるだろう事は、想像に難くない。
それは我々アニメファンにとって嬉しい事にちがいないが、広告屋にとっては飯の種と沽券を失うという事なのである。彼らは抵抗を続けるか、新しい関わり方を模索するのだろう。
いずれにしても、彼ら広告屋にとってけものフレンズが目の上のタンコブである事に変わりはない。このことは、今後メディアの動向を見ていれば解る事と思う。

・ファンが作品を育てる

広告屋はけものフレンズを否定せざるを得ず、そのためにこの作品はあまり良い状況に置かれているとは言い難い。
けれど多くのファンは、この作品がどれほどの苦境にあったかを知っている。10人という非常識な少人数での制作体制、監督自身が休みなしにギリギリまで作業を続けている事、何よりも誰からも期待されていなかったという事実。
だからこそ、ファンはなお一層作品に対して愛を向けている。放送が終了してじき一ヶ月にもなろうとしているのに、話題に事欠くということがない。
ショップを開けば即日完売、トークショーのチケットは瞬殺、ニコニコ動画の1話は600万再生を超えてなおまだ伸び続けている。
Mステへの出演や動物園とのコラボに対してネガティブな意見を出す者もいるが、商業的な面では完璧な成功を収め続けている。
この低予算の上に成立した作品が一体どれほどの利益を生み出したのか、もはや想像すら難しい。
その利益を生み出したのが何であるのか、何故なのかを今更語る必要はないだろう。

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  1. 2017/04/22(土) 22:42:18|
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